今回は、テンマガ編集部木村が転職を経験し気付いた「好きなことを仕事にする」ということについてご紹介します。
「好きなことを仕事にする」って、誰しも一度は憧れたことがあるフレーズですよね。
「好きなことなら、毎日が楽しくて仕方ないはず!」なんて思ってしまいます。
このフレーズには確かに大きな魅力があり、多くの人がそれに導かれてキャリアを選んでいることでしょう。
しかし、実際に「好きなこと」を仕事にしてみると、理想と現実のギャップに直面することが少なくありません。
私も大学を卒業して、大手旅行会社に新卒で入社したとき、まさにその信念に燃えていました。
学生時代に感じた「好き」という気持ちをそのまま仕事に活かせるなんて、こんなに素晴らしいことはないと思っていました。
旅行という分野に情熱を持ち、異文化との交流や新しい場所への探検に心を踊らせていた私は、自分の未来がバラ色に見えていました。
しかし、実際にその道を歩んでみると、理想と現実のギャップにぶち当たり、何度も挫けそうになったことを思い出します。
今日は私の経験を通して、「好きなこと」を仕事にすることの本当の意味や、その中で感じた課題について、ちょっとお話ししてみたいと思います。
旅行会社での新卒入社:ワクワクのスタート
大学を卒業したばかりの私は、新卒として大手旅行会社に就職しました。配属先は支店のカウンターで、お客様に海外旅行のご案内をする仕事です。
学生時代に短期留学を経験して、異文化と触れ合う楽しさを知った私には、この仕事がまさに理想的だと感じました。旅行の計画を立てることはもちろん、異文化交流や新しい場所への探検は、私にとってワクワクが止まらないものでした。
特に、異文化との接点が多いこの仕事を通じて、多くの人々にその魅力を伝えられることに期待を寄せていました。
「私が手配する旅行で、お客様が新たな世界を発見し、素晴らしい経験をする。」そんなイメージを抱いて、意気込んでこの仕事に取り組み始めたのです。
毎朝出勤するたびに、新しいチャレンジが待っているという高揚感を感じていたのを今でも覚えています。
「好きなこと」を仕事にするという選択:夢の扉が開かれた…と思った
私が旅行業界を選んだのは、ただ旅行が好きだったからという単純な理由だけではありませんでした。学生時代に経験した短期留学が、私の人生を大きく変えたのです。
異文化に触れることで視野が広がり、現地の人たちとの交流がもたらす驚きと喜びに魅了されました。特に、現地の人々との交流を通じて、彼らの価値観や生活スタイルに触れることができたのは、私にとって非常に刺激的で新鮮な体験でした。
その時、私は自分の中に眠っていた「探求心」を再認識しました。
「よし、この体験を仕事に生かそう!」そう決心した私は、大手旅行会社への就職を選びました。
私は、自分の経験や感動を他の人々にも伝えたい、そんな強い思いを抱いていました。
夢はでっかく、「多くの人々に旅行の魅力を伝え、彼らの夢を形にするサポートをしたい!」という気持ちでいっぱいだったのです。
現実とのギャップ:理想と現実のズレに戸惑う
しかし、実際に旅行会社で働き始めてみると、現実の厳しさがジワジワと押し寄せてきました。
入社当初は、お客様と楽しく旅行を企画し、一緒に素晴らしいプランを作り上げる仕事だと信じていました。
しかし、仕事が本格化するにつれて、私が夢見ていた仕事は全体の一部でしかないことに気づき始めました。
実際には、お客様と接する時間は仕事のほんの一部で、残りの時間はバックオフィスの業務に追われる日々だったのです。
例えば、飛行機の予約やホテルの手配、さらには入金確認にお礼の連絡、日程表の作成といった事務作業が大半を占めていました。
それに加えて、予約内容の最終確認や変更対応、そして、台風やストライキといった予期せぬトラブル対応が日常茶飯事となっていました。
これらの仕事は、旅行を手配するうえでは欠かせない業務で種が、「私がやりたかったことはこれだったのか?」と自問することが増えていったのです。
「え、こんなはずじゃなかった!」と、心の中で何度も叫びました。だって、「好きなことを仕事にする」って、もっと楽しくキラキラしているはずじゃないですか?
それが、細かい事務作業に追われる毎日だなんて、まさに夢と現実のギャップに打ちのめされた瞬間でした。
特に、旅行の楽しさや感動を直接伝える機会が少ないことに、次第に疑問を感じるようになっていきました。
「担当者制」の導入とやりがい:人と繋がる仕事の醍醐味
そんな中、私が勤めていた旅行会社では「担当者制」を導入していました。
このシステムでは、お客様と初めて接触してから、ご予約、入金確認、日程表の作成、出発前の確認、帰国後のフォローまで、すべてを一人で担当する仕組みです。
言い換えれば、お客様の旅行全体を一貫してサポートする役割を担うことになります。
この担当者制は、お客様との絆を深める素晴らしい機会を提供してくれました。
例えば、あるお客様と初めて旅行のプランを作成した際、私が提案した場所をとても気に入っていただきました。
その後、そのお客様はリピーターとなり、毎回私に旅行の手配を依頼してくれるようになったのです。旅行先からお土産をいただいたり、帰国後に「〇〇さんにおすすめしてもらった場所が最高だった!」という感謝の言葉をいただいたりすると、まるで自分が旅行に同行していたかのような充実感を得ることができました。
正直なところ、このシステムにはやりがいを感じました。
お客様の満足が直接自分の評価につながるこの仕組みは、私にとって非常に魅力的でした。お客様が喜ぶ顔を見るたびに、「この仕事を選んで良かった!」と心から思いました。
ただ、その一方で、全ての責任が自分にのしかかってくるプレッシャーも半端じゃなかったんです。
特に、予期せぬトラブルが発生したときには、迅速かつ的確な対応が求められ、心が折れそうになることもありました。
過酷な就業環境:プライベートって何ですか?
さらに追い打ちをかけるのが、終わりの見えない仕事量。お客様と接客している間にも、電話やメールの問い合わせが山のように溜まっていくのです。
閉店後がやっと事務処理を進める時間。「ここからが本番だ!」と声が上がるたびに、「やっても、やっても終わらない…」と、心の中で途方に暮れていました。
終電で帰るのが当たり前、朝は早出で準備、10連勤や20連勤も日常茶飯事。まるで自宅が寝るためだけの場所になっていました。
当然、プライベートの時間なんてほとんどなく、休日も会社のことが頭から離れません。友達からの誘いを断るのは日常で、「今日って何曜日だっけ?」なんて、自分でも訳がわからなくなるほど。
こんな生活が続けば、体力も精神力も限界を迎えるのは時間の問題でした。
さらに、周囲を見渡すと、私と同じように将来に不安を感じて退職する同僚が次々と現れる状況。
「この職場に未来はあるのか?」という不安が、次第に私の心を支配していきました。転職を考え始めるのも時間の問題でした。
将来への不安と転職への意識:私の未来はどこにある?
このような過酷な環境で働き続けるうちに、「このままでいいのだろうか?」という疑問が頭をよぎるようになりました。
旅行の知識は増え、お客様にも喜んでもらえている。
しかし、果たして30代、40代になっても、今と同じ働き方を続けたいのか?自問自答する日々が続きました。旅行業界が好きで始めた仕事なのに、その仕事が自分を疲弊させている現実に向き合わざるを得なくなりました。
例えば、ある日のこと、仕事中にふと窓の外を眺めた時、同僚が退職していく姿が頭をよぎりました。「彼らは、どこか他の場所で新しい人生を始めているのだろうか?」と考えると、今の環境から一歩踏み出すことができない自分に対して、焦りと不安が募りました。
特に、周囲の同僚たちも同様の状況に置かれており、離職率が非常に高かったことが、この疑念をさらに強めました。
毎月どこかの支店で誰かが辞めていく状況が続き、次第に「この職場に未来はあるのか?」という不安が心を支配するようになったのです。転職を考え始めるのも時間の問題でした。
管理職の推薦と決意:岐路に立たされた瞬間
そんな中、29歳の時に上司から管理職への推薦の話が舞い込みました。
「今までの努力が認められた!」という嬉しさとともに、同時に「この働き方がずっと続くのでは?」という不安が頭をよぎりました。
実際、周囲の先輩や上司たちは、相変わらず休日でも会社にいて、仕事漬けの毎日を送っています。このまま進んでいけば、私も同じ運命を辿ることになるのでは?そんな思いが私の心に強く芽生えました。
岐路に立たされた私は、ついに今の仕事を手放す決意を固めました。
このままここに留まるか、それとも新しい道を切り開くか。
私は後者を選び、新たな未来へ一歩踏み出すことにしたのです。
管理職への道は、確かにキャリアアップの一環として魅力的に映るかもしれません。
しかし、私にとってそれは、今の過酷な労働環境がさらに長期化することを意味していました。
先輩や上司たちがその姿を体現していたため、これ以上の成長が見込めないことを悟ったのです。
このままこの環境に留まるか、それとも新しい道を切り開くべきか。その選択の岐路に立たされた私は、ついに今の仕事を手放す決意を固めました。
キャリアコンサルタントとの出会い:目から鱗が落ちる瞬間
転職を真剣に考え始めた頃、私はあるキャリアコンサルタントと出会いました。
彼が教えてくれたのは、「5年後、10年後に自分がどうなっていたいか?」という将来のビジョンをまず明確にすること。
そして、そのビジョンを基に、逆算して現在の行動を決めていくというアプローチです。
「え、そんなこと考えたこともなかった!」と、まさに目から鱗が落ちる思いでした。
これまでの私は、「好きなこと」「得意なこと」を仕事にすることがすべてだと信じていましたが、コンサルタントのアドバイスを受けて、「自分がどうなりたいか?」を考えることの重要性に初めて気づいたのです。
例えば、「5年後には自分がどんなキャリアを築いていたいのか?」、「10年後にはどのような生活を送りたいのか?」といった具体的なビジョンを持つことで、今すべきことが明確になります。このアプローチに従い、私は自分の将来像を考え、それに向けて必要なスキルや経験を洗い出す作業を始めました。
「好き」を仕事にするだけでは足りない:目標に向かって進むために
「好きなことを仕事にする」だけでは、キャリアの成功には十分ではないことをこの時初めて知りました。好きなことや得意なことは、あくまで手段であり、最終的な目標は「自分が望む未来を実現すること」であると理解しました。
この考え方を持つことで、私の転職活動はより計画的で目的意識を持ったものとなり、キャリアビジョンが明確になっていきました。
例えば、私は「5年後にどんなポジションに就いていたいのか?」を明確にし、そのために今必要なスキルや経験をリストアップしました。
そして、そのリストに基づいて、自分の強化すべき点や、転職先で求められる能力を意識しながら活動を進めました。
これにより、転職活動がただの「逃避」ではなく、将来の目標に向かうための「戦略的なステップ」へと変わっていったのです。
自分のキャリアビジョンを考える:目指すべき未来を描く
「好きなこと」や「得意なこと」を仕事にしようと考えている皆さんも、まずは「自分がどうなりたいか?」をしっかりと考えることが大切です。
そこから逆算して、必要なスキルや経験を積むことで、自分のキャリアを成功に導くことができます。キャリアは単なる仕事の延長ではなく、「自分の人生をどう生きたいか」に深く関わってくるものです。
また、将来のビジョンが明確になると、今すべきことがより具体的に見えてきます。たとえば、どの業界でどのようなスキルを磨くべきか、どのような経験を積むべきか、さらにはどのようなネットワークを築くべきかといった行動が明らかになります。このように、ビジョンを持つことは、キャリアを計画的に進めるための羅針盤となります。
さらに、キャリアビジョンを持つことで、自分自身の成長や変化を実感することができます。目標を持って行動することで、日々の仕事にも目的意識が生まれ、それがモチベーションの源泉となります。
結果として、ただ「好きなこと」をしているだけでは得られなかった充実感や達成感を味わうことができるのです。
最後に:自分のビジョンを見据えて
「好きなことを仕事にする」という考え方は魅力的ですが、それだけではキャリアの成功には十分ではないことを私は自身の経験から学びました。
大切なのは、自分が将来どのような姿でありたいか、そのためにどのようなスキルや経験が必要かを考え、その上で好きなことや得意なことを手段として活用することです。
人生は一度きりです。だからこそ、自分のビジョンを見据えたキャリア選択が重要です。今の仕事に満足している方も、そうでない方も、自分が望む未来を見据えた上でのキャリア選択が、最終的には最も満足度の高いものになるはずです。
自分のビジョンを明確にし、その実現に向けて一歩ずつ進んでいくことで、充実した人生を築いていきましょう。
〈編集:テンマガ編集部木村〉