今回はアクセス都市設計の福田社長と豊川専務にお話を伺いました。
私たちの暮らしに欠かせない建設業界。一方で、業界離れの現実も問題視されています。
そんな中、新たな視点で業界の常識を変えようと奮闘する社長の姿がありました!
〈聞き手=山崎(テンマガ編集部)〉
「分からないことは任せる」経営術
まず簡単に自己紹介をお願いしたいんですけれども、建設業界に入られたきっかけやこれまでの経緯についてもお伺いしたいです!
はい!もともと自社の創業というのが砂利採取業という、別の業種なんですよ。
また建設資材が主に生コンクリートに使われるということもあり、コンクリートの製造をしているプラントが今、京都に2ヵ所あります。
その2つの事業を主に行いながら、砂利の取り終わった跡地にて太陽光の発電所をしたり、そういう形で事業を広げておりました。
その中でアクセスとのご縁がありました。アクセスは主に大手のデベロッパーさんのお手伝いをするということもあるので、当時の事業と垂直のつながりがありうまく連携ができるんじゃないのかなというので、株式の取得をしました。
なので、僕自身が設計に対しての知識があるかどうかというと、そうではないんですけれど、外部からの支援という部分と、仲間の中で業務を行ってくれている設計士の方や代表の方がいてくれているというような体制でやっているような状況ですね。
建設のことや設計のことは専門ではないという状態で代表になられたということで、不安であったりはなかったのでしょうか?初めてのことや自分に知識がないことに踏み込むのはすごい勇気がいるとおもうのですが・・・
分からない部分は分かっている人に任せるしかないなという気持ちでした!
現場の優秀な方に任せて、僕は経営面を担うというような役割分担という形ですかね。
信頼関係は当時からあったという感じですか?それともやりながら築き上げてきているような感じですか?
もともと信頼していた部分ももちろんありましたし、やりながらも築いてきました!
今までにあった一番ピンチだったお話はありますか?
何が原因かわからないんですけど、社員さんが辞めて、さらに他の社員を引き抜いていったとか。ですかね。
辞められてその方がもう引き連れていった?!
そうです、既存の社員さんを引っ張っていったっていうような。そんな感じですかね。この業界ではよくある話なんですけどね
そうなんですか!
建設業界でも、建築士に限らず、電話工事など他の業種でも、修行の世界では、もともと一緒にやっていた人が独立して、方向性の違いであったり、やりたいことが違うとかっていうので独立して、そこに以前の会社の信頼関係みたいなのがあって、引き抜くというか、ついていくっていうのは、よくある話なんですね。でも業界って狭い世界だと思うんですけど、バレバレですし、いろいろ問題になることは多いですね。
そうですよね。そういう時どう対処されたんですか?
まだ今、対処中です!こういうお話は対応するのにもなかなか時間がかかるんですよね。。
かなりピンチな出来事ですね。ただでさえお忙しいので、時間はかかりますよね。。では今振り返って、今だから笑えるエピソードがあれば教えていただけますか?
笑える話かどうかはさておき、やはりお給料の設定は本当に難しいというところがあります!業界的に人の出入りがすごく激しいんですよね。過去には大手の会社さんから来られた方で、お給料と実力の差が大きく見られたこともありました。
元々は社内でお給料の規定や水準が決まっていましたが、そういう経験から見直す方向で進んでいます!
「新しい評価制度の挑戦」
評価の見直しは具体的にどのようなことをされていますか?
まだ完成していないのですが、初めに7段階のうちのレベルをご自身で見てもらって、どれくらいできそうかというのを選んでもらいます。そして半年間などで期間を決めて試用期間で働いてもらい、再評価をする形を取ろうと考えています。その方がお互いミスマッチなくできるようになるんじゃないかなって思っています。
最初に自己評価するのは良いですね!評価は社長がされますか?
僕を含めて管理職のメンバーで評価をします!
今まで無名の会社で働かれていた方とかでも、その方個人をしっかり評価していただけるということですね!それに大手だからといって必ずしも即戦力とは限らないということですね。
その方の実力云々というよりかは、会社の規模が大きいと、どうしても分業になるんですよね。うちの会社の規模では一人が何でもオールマイティにやらなければならない。そこで生じたミスマッチかなと思いますね。
御社で働くとめちゃくちゃ実力がつくということですね!!
はい。うちで経験を積んで、今までに何人も独立されていますよ!
すごいです!
独立されて、業務の立ち位置的に逆転したりなんかも良くあります!(笑)
そうなる場合もありますよね!!(笑)独立意欲が高い方に対して、自分としては背中を押すような体制ですか?
もちろんです!ですがある一定期間、独立するためにはそこそこの経験を積まないと難しいので、その間は頑張っていただきたい。
本人がまだ十分な技術を身につけていない段階で独立してしまうと、それが実際に表に出てしまうと、難しい部分が出てくるので、あまりに早い段階での独立は控えた方が良いと考えています。
中途半端に独立してしまって、またゼロから積み重ねるのは本人が一番大変ですからね。
「任せる経営」が生む120%の結果
事業を成功するために心がけられていることや、マインド・価値観などをお伺いできたらと思います!
さっきの『任せる』というのは、自分の中では大きいなと思っていて、もちろん自分ができることはありますが、自分がそれをし続けていたら、もちろん自分なりの答えは出ると思うし、満足はすると思うんですけど、それ以外のことができなくなると思うんです。だから、結果が仮に60%とか70%になってしまっても、信じて任せることを続けていたら、たまに自分じゃできなかったような120%ぐらいの答えが出てくることがあると思うんですよ!
『信じて任せる』すごくいいお言葉をいただきました。ありがとうございます。
御社と社会とのつながりについてお伺いできたらなと思うんですけども。御社が事業をされていて、社会問題に対して解決されているなって実感されることはありますか?
私が自主的にやっているわけではないんですけども、行政からの条例に基づいて、それに適応するような設計をしています。あとは景観に配慮したり、積極的に反映するような取り組みをしているところが多くあります。
京都の景観条例は全国の中でも厳しい方なんですか?
きびしいですね!
福田社長が今、感じるやりがいや楽しさについて、教えていただきたいです!
今回の査定を変えることは、外から来たからこそできることなんじゃないかなと思っています。『こんなのしたらいいのにな、あんなのしたらいいのにな』というアイデアはまだまだたくさんあります!
ずっと建築士としてやって来られた方とは違う視点で見られるというところですね!今後の展望はありますか?
働き方改革です!働く方それぞれの思い描くワークライフバランスによって、スタイル別にチーム分けができればと考えています!
同じ”働く”といっても、定時で上がりたい人、残業を進んでやりたいと思っている人、様々だと思うんですね。
それめちゃくちゃいいですね!!
全員定時希望だったらどうしよう!って思っちゃったりもしますが(笑)
それはそれで効率が上がりそうですね!!(笑)
設計士さんって、本当に大変なお仕事なので、せっかく資格を持っていても、違う職種に転身されたりされる方も多いんですよ。ですから、少しでも労働環境を改善できるよう考えています!
素晴らしいです!ありがとうございます。最後に、この記事を読む方々に向けて、何かメッセージを頂けたらと思います!
1級または2級建築士の方が見ていただけた時に、やりがいは間違いなくあると思いますし、新しく評価制度も作っているので、本人のやる気次第ではどんどんお給料が上がる仕組みがあります。勤務地も大阪と京都にありますので、一緒にお仕事ができる方、お待ちしています!
ありがとうございます。
豊川専務が歩んだキャリアの軌跡
続いて、現場について豊川さんにお伺いできたらと思うんですけれども、まずは簡単に自己紹介いただいて、現場との関わり方とかも踏まえて教えていただけたらと思います!
長くこの業界で働いてきて今に至るんですけど、元々は現場監督をしたかったんですけど、アルバイトで1年くらい行ってたんです。その時に設計事務所の方が、かっこよく仕事をされてるなと思って、そこから設計をやりたいなと思うようになりました。現場も付き合ったんですけど、やっぱり人の書いたものでつくるよりも、自分で設計したいなと。
そこから資格を取られましたか?
資格はなかなか取ることができなくて、7、8年前にようやく取れました。それまで何回もチャレンジしたんですけど、なかなかうまくいかず。
それだけでも難しい資格ということですよね。お仕事をされながら勉強もされていたということですね。
当時はものすごく忙しかったので、仕事が長引くことも多かったんです。今はそこまでではないですけど。
仕事が深夜になっても、そこから勉強されたりしていたんですか?
そうですね。あとは休みの日とか
すごい。ほぼ寝てないような感じだったんですかね。時間は作るものなんですね。
その時はそういう思いが強かったので。
すごいですね。現場の方や設計士さんの方とは、社員の方とどのように関わられていますか?結構密に関わられていますか?
毎週設計ミーティングを、京都で1週1回、大阪と合同で週2回、週末にやっています。そういう部分では、全物件の動きやコミュニケーションは取れている状態ですけれども、ただスタッフが物件数の割には少ないので、やはり特定のスタッフに業務が集中してしまう。それがうまく分散できたら、本人がつぶれる前に対応できるようになると思います。
少人数で20件を回す—現場スタッフの奮闘記
今社員さんは何人くらいおられるんですか?
大阪で8人、京都で9人です。
たったそれだけの人数で全部やってるんですか?
そうです。
何十人もいらっしゃって、それぞれに分かれているイメージでした!
常時動いているのは多分20件ぐらいです。ただ、一旦現場着工すると、管理業務がメインになるんですけれども、その設計の期間よりは手がかからないので、設計の期間が重なると結構大変です。そのタイミングがうまくずれてくれたらありがたいです。
御社の社員さんの雰囲気を伝えたいと思っているんですが、現場の雰囲気はどのような雰囲気でしょうか?
やっぱりまだ若くて経験が浅いスタッフが多いので、知識を吸収したい、何事にも興味を持ってやっていきたいというスタッフばかりです!目先の作業に時間を取られて、本人が吸収したい部分まで、なかなか意識や時間が取れていないのが現状ですが・・。そこをうまく本人の希望に沿った業務形態が取れれば一番良いと思います。
常に案件はあるから、次のステップへ進むのが難しかったりしますよね。
ただ、評価制度があるので、一定のステップに進んだら対応がよくなるというのが見えてきて、そういう意識のある人間はそこに入りやすくなっていくということですね。
私の勝手なイメージですが、お仕事をされているときって、パソコンに向かってお一人お一人が黙々と作業をしているイメージがあるんですけれども、私のイメージ通りですか?
大体イメージどおりです。イメージどおりなんですけども、メインで担当になると、打ち合わせがめちゃめちゃ多いんですよ。施主や関連業者との打ち合わせ、現場との打ち合わせや、電話もあちこちからかかってくるので、メインの担当を持つと、外部とのやり取りが増えて、週3日ぐらいは現場などに打ち合わせに出かけることが多いんです。ただ、物件を担当できないスタッフは、事務所内での内勤が多いので、やっぱり内勤が多いと集中して静かな状態になります。たぶん、かなりストレスが溜まると思います(笑)。なので早く自分でコントロールして物件の担当になるのが、一番楽になると思います。
内勤の方々は、入ってこられたばかりでいきなり担当を持ったり、責任者になることはないと思いますので、最初に入ってこられた時の一日のスケジュールをお伺いできたらと思います!
そうですね。図面を描くのが7割で、申請や役所とのやり取りが3割ぐらいですね。ほぼ事務所内での作業が中心になります。ただ、若いスタッフには早く仕事を覚えてもらって、自分で物件を持てるようになってほしいです。最初は大変かもしれませんが、コミュニケーションを取りながら進めることで、やりがいも出てくると思います。
確かに、人に指示されてやる作業と、自分で責任を持って進める仕事では、達成感が違いますよね。残業は多いのでしょうか?
残業は、しているスタッフもいますね。特に繁忙期などはどうしても仕事が立て込んでしまいます。ですが、最近はワークライフバランスを重視する方も多く、残業をできるだけ減らすように努力しています。仕事の進め方や配分を工夫しながら、できるだけ定時で帰れるようにしています。
なるほど。やはりワークライフバランスを大切にする社員さんもいらっしゃるんですね。
「技術を磨いて未来を切り開け」
最後に、この記事を読む方々、特にこれから業界に入ろうとしている方々にメッセージをお願いします。
そうですね、うちの会社に入っていただく理由としては、やはり技術を身につける期間が必要だということです。本当に好きでこの仕事をしたいという気持ちがあるなら、最初は大変かもしれませんが、そこを乗り越えることで新しい景色が見えてくると思います。経験がすべてとは言いませんが、いろいろな物件を担当し、いろいろな人と接することでしか学べないことがたくさんあります。それができれば、この仕事の面白さを感じられると思います。
やはりこれまでやこれからの経験が重要なんですね。
特に建築の世界では、実際に手を動かしながら学ぶことが多いですからね。
今日はありがとうございました。
こちらこそ、ありがとうございました。
編集後記
今回は福田社長と豊川専務から、建設業界におけるリアルな課題と、それを乗り越えるための強い信念を感じました。福田社長が語る「任せる経営」の重要性が伝わってきました。
また、豊川さんが現場で直面する具体的な課題と、その解決策について話す姿からは、日々の努力と経験が積み重なってこそ成し得るプロフェッショナルの姿を垣間見ることができました。
新たな建設業界へ一歩を踏み出すきっかけにしていただければ幸いです。
〈編集部より〉